冷泉さんに、初めて飲みに連れて行ってもらった時のこと。
みんなで日本酒を呑んでいて、冷泉さんのお猪口が空になったので、あ、つがなきゃ、と思い、徳利を持ち、冷泉さんのお猪口に注いだ。その注ぎ方をじっと見ていた冷泉さんが一言。
「色気がないなぁ!」と言った。
「こうやるんだよ」と、私が持っている徳利を取り、手本を見せてくれた。
私は手首より肘が上がってしまっていたのだ。そんなことを注意してくれる人は、まして、色気がない!と、はっきり言ってくれる人は、なかなかいない。せいぜい「注ぎ方が下手だなあ」と心の中で思われるだけだ。
本当にあの時、教えてもらえてよかったと、心から思う。
あれから、徳利を手にするたび、冷泉さんの「色気がないなぁ!」と言う声が聞こえる気がする。
私は色々忘れっぽいし、一度注意されたことをまたやってしまうこともあるのだけれど、
これだけは一度も忘れたことがない。
もう一生、忘れないだろう。
いつか、再び冷泉さんとお酒を酌み交わす時が来たら、このお礼を言いたい。
もう一度、一緒に飲みたい。
同じように、もう一度、冷泉さんと飲みたいね、と言っていた女性と一緒に、冷泉さんの面影を探してゴールデン街を彷徨ったことがあるのだけれど、その話しも、いずれ。
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