俳優の心得(たぶん)冷泉さんが言ってました

二日酔い

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10月3日。
打ち合わせが、早く終わりぶらぶら。
その時、パッと、思い浮かぶ。
目指すは、新宿ゴールデン街。
華やかな衣装を纏った人を横目に、
路地を曲がり、無事に到着。

新型コロナウイルスの影響で
しばらくの間、休んでいたようだ。
そこは『クラクラ』という飲み屋。
冷泉さんが通っていた店だ。

ぼくが、譲り受けた服の一枚に、
表に「新宿ゴールデン街」
裏に「酒を捨てたら、夢も死ぬ」と書いてあった。
なかなか、インパクトはあるが、お気に入りで。
稽古着の絶対的エースだ。もともと着古してあるからか、妙に落ち着く一枚で、不思議な服。

とりあえず、その服の源泉を辿ってみたい。
それから、冷泉さんが好きだった場所に行く。
これが、ぼくのやりたいこと。
その第一回目が、今日になったわけだ。

六本木稽古場時代、『クラクラ』の話は、
聞いたことがあった。

どこで飲むことが多いんですか。
新宿ゴールデン街とかな。
居心地がいいよ。仲間がいるしね。
一人飲みと仲間飲みする場所を
分けているとも言っていた。
そこで、クラクラの話が出てきて、黒田征太郎さんの話とか色々してもらったが、
ここでは割愛。話を戻す。

ドキドキしながら、階段を上った。
とりあえず、目当てのTシャツの話でもと思い、
新宿ゴールデン街Tシャツは、まだ売ってますか?
サイズは、XLなんですけど…。
そこに居たママが、一生懸命、在庫を探してくれた。
あったよ!

僕は、2000円を支払い、手にする。
すぐに、異変に気がついた。
胸元に、新宿ゴールデン街ではなく、クラクラの文字。
あえて、突っ込みはしなかったが、なんだか、変な感覚になった。

その気持ちをかき消すように、
冷泉公裕、知ってますか?
さすがに、単刀直入すぎたか。
すぐに、言い直した。
冷泉さんと同じ事務所で、
俳優の谷裕介です。
彼の好きだった店を旅していて、
一杯いいですか。

冷泉さん。
あ〜。店内にいたママが、天井を指さす。
これに出てたかな。
一枚のポスターに目を向ける。
この辺が、出演した俳優さんの名前があるところかな。
探してみると、「冷泉公裕」の名前があった。
なんだか嬉しい気持ちになった。
それは、『天守物語』のポスターだった。

この界隈やコロナ後の話など、世間話をしていると、
オーナーの外波山さんと会う事ができた。
今回の経緯を説明した。

外波山さんは、東京スポーツで、
「新宿ゴールデン街交遊録、裏50年史」の記事を書いているとのこと。
そこに、冷泉の話を書いたよと、見せてくれた。

そこには、ある俳優の葬式帰り。なぜか話題が、「薄毛」になり、
外波山さんと冷泉さんと仲間で、互いの頭を眺めシャンプーをすすめあったことが書かれていた。
その話を聞いて、僕は腹を抱えて、笑ってしまった。
こんなに、大笑いしたのは、いつぶりだろうか。
外波山さんも、一緒に笑っていた。

ただ、そのあと、そのシャンプーを今でも取り寄せしている話を聞いて、なんだか胸が熱くなった。
なんだろう、この感覚。粋ってやつか。これが。
よくわからないが、涙が出そうになったので我慢した。

そこからは、新しく入ってきたお客さん達と
会話を交わしながら、お酒をご馳走になり、
楽しい時間を過ごす。そして、帰った。

翌日、隣にいたお客さんが僕に伝えてくれた言葉を思い出す。此処は、「風の集まる場所ですよ」。
初めての感覚だった。言葉に、二日酔いしていた。
冷泉さんの好きな場所に、冷泉さんの好きな人がいる。
ここから学べることが、まだ沢山ある。
僕は旅する理由を見つけた。

今日は、ずっと続けている一人稽古の日。
柔軟と声出し。それから荒武者ピラス。
やることは、なんら変わらない。
今日の稽古着も、胸元には、新宿ゴールデン街の文字。

About The Author

FMG俳優、モデル、ファッションプランナー谷裕介
1993年石川県生まれ。東京育ち。日本大学生物資源科学部を卒業後、同大学院に進学。大学院在学中にバングラデシュにてファストファッションにおける生産の実態について研究。この経験から、ファッションに重要なことは、明確な意見や主義を持つことではないか。
それを「ファッション・プリンシプル」と定義し、トークライブなどを開催。
2018年からは、いしかわ観光特使に就任。
趣味は、旅と靴磨き。好きな食べ物は、いなりずし。
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劇団文学座に29年間在籍。舞台、映画、ドラマのバイプレイヤーとしての存在感とともに、俳優業と並行して続けたライブ活動における歌手冷泉のファンもたくさん存在していた。三枚のCDアルバムを発表。FMGワークスタジオのコーチとして新人を指導し、FMG公演では演出も手がけた。

FMGワークスタジオ

1999年FMGの新人育成を目的に冷泉公裕のコーチによる、俳優など表現者に必要な基礎を学ぶスタジオとして設立。しなやかな肉体、豊かな声作りに重点を置き、文学座の特徴であるリアルな演技表現を大事にした。レッスン生のひとりひとりの個性を見きわめ、持ち味を魅力的に引き出す指導だった。
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俳優・学芸人
1984年。神奈川県生まれ。2013年よりfmgワークスタジオ参加。2015年より北斎を楽しく学べる芸人[学芸人]葛飾ふとめ・ぎょろめのふとめとして墨田区を中心に活動中。三度の飯より甘味好き。趣味、食べ歩き。‬憧れの女優は浦辺粂子、塩沢とき、杉村春子。
葛飾ふとめ・ぎょろめ公式サイト
http://kitachan.jp/futogyoro/
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平成7(1995)年、長野県長野市に生まれる。8歳から野球を始め、高校まで続ける。平成30(2018)年、慶應義塾大学文学部を卒業。在学中に映画、舞台に興味を持ち、卒業論文の表題は「ヒッチコック映画における階段シーンのサスペンス性」。2017年4月からワークスタジオ参加。現在はお芝居はもちろん、文章表現にも関心を持って、エッセイや短編小説なども執筆中。
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鯖と餃子と猫が好き。夢はなぎら健壱さんになる事。
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1993年、石川県生まれ。東京育ち。日本大学生物資源科学部を卒業後、同大学院に進学。大学院在学中にバングラデシュにてファストファッションにおける生産の実態について研究。この経験から、ファッションに重要なことは、明確な意見や主義を持つことではないか。 それを「ファッション・プリンシプル」と定義し、トークライブなどを開催。 2018年からは、いしかわ観光特使に就任。 趣味は、旅と靴磨き。好きな食べ物は、いなりずし。
FMG所属
俳優
1979年、東京生まれ。 代表作に、映画『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』、『遺体 明日への十日間』、TBS系月曜ゴールデン『狩矢警部シリーズ』、BSフジ『警視庁捜査資料管理室』など。 読書家としても知られ、書評・映画評にもファンが多い。電子書籍文芸誌に連載したエッセイが単行本化されている。「小橋めぐみの本のめぐみ」
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1972年、兵庫県出身。2000年、現代制作舎30周年記念FMG提携公演『リメイン』をきっかけに、FMGに所属。冷泉チルドレンの古株としてワークスタジオを引っ張り、沢山の後輩に慕われる。美容師免許も持つ料理上手な一児のパパ。現在は子育てにも奮闘中!