第8回 イタリア映画『緑はよみがえる』
硬いブロンズを鑿で刻み込んだような。いままでに観たことがない戦争映画。
詩的にして先鋭。塹壕に閉じ込めらた兵士たちは目の前を走り抜ける兎にくっきりと立つ落葉松に心を寄せる。
その美しい月明かりの雪原。
「木靴の樹」の名匠エルマンノ・オルミ監督の新作。兵士たちの肉体を吹き飛ばす砲弾のリアルさ。
1時間20分身じろぎも出来ずこの美しい戦争映画に見入った。
「西部戦線異状なし」に似ているがリアルさが濃い。
劇中羊飼いの言葉「戦争は休む事なく大地をさまよう醜い獣だ。」
また一つ人間の愚行に刃を突きつける戦争映画が生まれた。
『緑はよみがえる』
STORY:
1917年、冬。第一次世界大戦下のイタリア・アルプス、アジア―ゴ高原。雪の山中に、イタリア、オーストリア両軍ともに塹壕を掘り戦況は膠着していた。敵は姿を見せないが、その息づかいが聞こえるほど近くにひそんでいる。劣悪な環境の塹壕に押し込められた兵士たちは、いつ落ちてくるかもわからない砲弾に怯え、戦意も失い、家路につくことだけを願っていた。彼らの唯一の楽しみといえば、家族、恋人から送られてくる手紙だけだ。
そんな時、厳しい戦況を知らない平地の司令部が出した理不尽な命令を携え、少佐と少年の面影を残す若い中尉が前線へとやってくる。通信が敵に傍受されているため、新たな通信ケーブルを敷けというのだ。命令を受けた大尉は、「土地の起伏も考えず地図をなぞっただけの計画だ。この月明かりの下で外へ出れば、狙撃兵の餌食だ!」と強く抗議し、軍位を返上してしまう。後を任されたのは何の経験もない若い中尉だった。彼は、想像とは違う戦争の酷薄さと、無力感に打ちのめされながらも、母への手紙にこう綴る。「愛する母さん、一番難しいのは、人を赦すことですが、人が人を赦せなければ人間とは何なのでしょうか」と・・・。
製作年:2014年
製作国:イタリア
配給:チャイルド・フィルム、ムヴィオラ
監督:エルマンノ・オルミ
脚本:エルマンノ・オルミ
製作:ルイジ・ムジーニ、エリザベッタ・オルミ
キャスト:クラウディオ・サンタマリア、アレッサンドロ・スペルドゥーティ、フランチェスコ・フォルミケッティ、アンドレア・ディ・マリア、ニッコロ・センニ
公式サイト
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