第9回 『ふたりの桃源郷』と『福島 生きものの記録』シリーズ4 〜生命〜
ポレポレ東中野は素晴らしいドキュメンタリー映画を上映するミニシアターだ。
ここでまた心に訴えかけてくる秀作に出会った。
「ふたりの桃源郷」山口県岩国市の山奥で暮らす老夫婦の25年のドキュメンタリー。
仲の良い老夫婦の淡々とした山の暮らし。それを心配する都会暮らしの子供たち。
1日の仕事を終え缶ビールで乾杯するふたりの笑顔。
認知が始まった奥さんはご主人の亡くなった事を認識せず山に向かって呼びかける。
「おじいさーん~」。澄み切ったおばあさんの声はまさに童女。
元は他人から始まった「夫婦」というかけがえのない関係、そして生きる、生き続ける。
そして消えて、死。
また「福島 生きもの記録」から聞こえてくるのも「生きる」ということ。
原発事故で荒れ放題の無人の町をイノシシ、サル、アライグマが歩く。
そしてその躯からは基準値の100倍のセシウム。
普通なら山深い中で生きものとしての生をまっとうしたであろう動物たちの無惨な死。
二つの作品を見て「いのちの尊厳」という言葉が浮かんできた。
それにしても25年間という長きにわたって撮影し続けた山口放送と「福島生きもの」を粘り強くかつ淡々と記録し続ける群像舎、岩崎雅典さんの「志」に敬意を表する。
岩崎さんは神楽坂「きくずし」で時々お会いする静かな酒品の人です。
『ふたりの桃源郷』
「山」で暮らす夫婦と、支える家族
誰もが自分や家族に重ねずにはいられない、
25年間の貴重なドキュメント。
山口県のローカル放送局・山口放送が、ある夫婦と彼らを支える家族の姿を足かけ25年にわたり追いかけたドキュメンタリー。
カメラが静かに捉え続けた、電気も水道もない山で暮らす夫婦と、離れて暮らす家族の姿は、多くの人々の心を掴み、再放送を望む声が局に寄せられるなど大反響を呼んだ。
山口県内および日本テレビ系列「NNNドキュメント」で長きにわたり放送され、「第4回日本放送文化大賞 テレビ・グランプリ」ほか数々の賞を受賞した伝説のシリーズ、待望の映画化!
『福島 生きものの記録』シリーズ4 〜生命
東京電力福島第一原発事故はチェルノブイリと同じ「レベル7」。拡散した大量の放射性物質ー。
それは生態系へどんな異変をもたらすのか?
2012年4月から警戒区域解除となった南相馬市小高区を皮切りに、浪江町の「希望の牧場」、川内村でのアカネズミ捕獲調査、警戒区域と富岡町の離れ牛などを追った記録映像です。
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