
第13回『ルージュの手紙』
「ルージュの手紙」(2017、仏)。
今年74才になるというカトリーヌ・ドヌーブの恐ろしいまでの存在感!
何十年ぶりかに目の前に現れた血のつながらない母親は娘との同居を望む。
長い間ひとりで助産婦として生きて来た生真面目な娘には耐えられない酒とバクチに明け暮れる老いた母親。
しかし時の流れは娘の心を徐々に溶かしていく。
彼女が母を受け入れようとした時届く一通の手紙。
そこには言葉はなく色鮮やかなキスマークが一つあるだけだった。
それは母からの別れのメッセージだった。
ドヌーブ、そして娘役を演じるカトリーヌ・クロ、両名優の前にも後にも縦にも横にもぶれない演技が素晴らしい。
「演技」とは何かという事をつくづく思い知らされる。
劇中何回かにわたって出てくる出産シーンのリアルさに、これは?
と思っていたが、
パンフレットによると監督のこだわりによる“ほんものの出産シーン”だった。
生(誕生)と死という事なのだろう。
俳優出身監督マルタン・プロヴォの目配りの良さに感心する。
久しぶりに普通の“大人”のいい映画を観た。
原題はSage…
2018年4月20日/作成者: kinema
第12回 『倫敦から来た男』
前々から気になっていたがやっと観た。今どきなかなか観ることがない傑作だ。
ハンガリーの鬼才タラ・ベールは徹底的に説明を拒否する。
モノクロームの光と影。金をめぐる殺人事件だがその全容は最後の最後まで分からない。
監督はわざと分からなさを極限まで引っ張っているかのよう。
あまりにばらばらなジグソーパズルの断片の少なさに中盤まで何度か観るのを放棄しかけるが後半に行くにつれてその画面、その演技から眼がはなせなくなる。
世界中の映画人が絶賛するはずだ。
モノクロームの美しさとハンガリー俳優たちの素晴らしい底力には一見も二見も三見もするほどだ。
特に殺されてしまう犯人『倫敦から来た男』の妻のハンガリー女優スィルテシュ・アーギの凄さにはただただ脱帽するしかない。
説明だけの雰囲気芝居が横行しているわが国のタレントたちもたまにはこれぞ演技というものを観たらいい。
また観たくなる麻薬性があるなこの作品は!
『倫敦から来た男』
ある晩、静かな港で起こった殺人事件。
偶然にも大金を手に入れた男と失った男。
二人の人生が交錯し、運命の歯車が狂ってゆく。
伝説的映画『ヴェルクマイスター・ハーモニー』の鬼才タル・ベーラ監督と
20世紀を代表する文豪ジョルジュ・シムノンが放つ孤高のノワール・サスペンス
監督:タル・ベーラ
原作:ジョルジュ・シムノン「倫敦(ロンドン)から来た男」(河出書房新社)…
2017年4月17日/作成者: kinema
第11回 『クイーン』/『紐育の天使』
前々から気になっていたヘレン・ミレン主演の「クイーン」を見た。
面白かった。
ダイアナ妃の死という生々しい時間軸の渦中のドラマだが見終わった後の味わいは意外にさっぱり。
王室ものというしばりの距離の取り方が製作側が絶妙なせいだろうな。
そしてなんと言ってもエリザベス女王に扮するヘレン・ミレンの底力!
ただただそれに尽きるか!王室一家の形象もユーモアたっぷり。
中でもチャールズ皇太子の腰のなさはリアリティーたっぷり。
しかしこうしたドラマを作れるイギリスという国と国民に民度の高い成熟を見る。
翻って僕達の国は…。
早く目が覚めたので古いアメリカ映画を観る。
「紐育の天使」モノクロームの画面の鮮やかか美しさ。
主演のリタ・ヘイワースは大根だがチンピラのダグラス・フェアバンクス・JRの味わいはなかなかのもの!
ラストが大甘なのがなぁ。
でも娯楽としての映画だから当時の観客にはこの程合いが良かったのだろうな。
【クイーン】
ダイアナ元皇太子妃が交通事故で急逝した直後のイギリス王室の内幕を描いた作品。かねてからダイアナとの不仲説が噂され、事故後も沈黙を貫き通そうとするエリザベス女王に、国民は次第に不満を募らせはじめる。そんな中、就任したばかりの首相トニー・ブレアが王室と国民の和解に奔走する。ひとりの人間として苦悩するエリザベス女王を見事に演じたヘレン・ミレンは、アカデミー賞をはじめ多くの映画賞で主演女優賞に輝いた。(映画.com…
2017年3月14日/作成者: kinema
第8回 イタリア映画『緑はよみがえる』
硬いブロンズを鑿で刻み込んだような。…
2016年10月9日/作成者: kinema
第5回 『ブリッジ・オブ・スパイ』
良い映画は冒頭の30秒でわしづかみにされる。正にこの映画がそうだ。
汚い小部屋。遠く街のノイズ。古本屋が似合う中年男のアップ。
鏡に映して自画像を描いている。突然響き渡る激しい足音とノック。逮捕される男。
男はソ連のスパイでアメリカ国籍を持ちニューヨークで暮らしていた。
トム・ハンクスは米ソの駆け引き上その男の弁護を引き受けさせられる弁護士。
トム・ハンクスがいい。中年の渋さが加わってリアリティがある。
何故敵側のスパイの弁護を引き受けるのかと詰る人に彼は云う。
「例えスパイであっても合衆国の一員であるかぎり弁護を受ける権利がある。
君はドイツ系、僕はアイリッシュといった具合にこの国は多種多様な人々で構成されている。
政治信条の違い、肌の色、宗教の差で区別されてはならない。
その時代の大多数が支持する政策に反対する1人の人間を大切にするのが民主主義だ。
むしろそうした少数派の人の言葉こそ耳を傾けるべきだろう。
多種多様な国民を統べる唯一のもの、それはこの国の憲法だ」
なんて美しいヒューマンな言葉だろうか。
ひるがえって今この国では「自己責任」といったそれでは国は必要ないではないかと言いたくなる言葉が正義面してまかり通っている。
この弁護士の言葉を「選挙で勝ったんだから何したっていいんだもんん」と無理を通すどこかの国の首相に聞かせたい。
東西冷戦、ベルリンの壁といった歴史の彼方に固まってしまった言葉が映像を通して生々しく甦って来る。
或る日東ベルリンの恋人に会いに行き西の部屋に戻ろうとする男子学生は目の前に突然出来上がった壁に遮られ帰れなくなる。
この圧倒的な恐怖のリアリティにぞっとさせられる。
監督スピルバーグ、主演トム・ハンクス2人のまぎれもない最高傑作であろう。
そしてスパイに扮する英国俳優マーク・ライアンスからは当分目が離せないだろう。
STORY:
アメリカとソ連が一触即発の状態にあった冷戦下の1950~60年代。ジェームズ・ドノバン(トム・ハンクス)は、保険の分野で実直にキャリアを積み重ねてきた弁護士だった。彼は、米国が身柄を拘束したソ連のスパイの弁護を引き受けたことをきっかけに、世界の平和を左右しかねない重大な任務を託される。それは、自分が弁護したソ連のスパイと、ソ連に捕えられたアメリカ人スパイを交換することだった。良き夫、良き父、良き市民として平凡な人生を歩んできたジェームズは、米ソの全面核戦争を阻止するため、全力で不可能に立ち向かってゆく……。
原題:BRIDGE…
2016年3月15日/作成者: kinema
冷泉のおすすめ今回は北欧サスペンスの秀作「真夜中のゆりかご」です。
サスペンスなので細かいことは書けない。
…
2015年9月14日/作成者: kinema
冷泉のこの映画見て欲しいなー。
「イミテーションゲーム」を下高井戸シネマ…
2015年9月14日/作成者: kinema








