
第12回 『倫敦から来た男』
前々から気になっていたがやっと観た。今どきなかなか観ることがない傑作だ。
ハンガリーの鬼才タラ・ベールは徹底的に説明を拒否する。
モノクロームの光と影。金をめぐる殺人事件だがその全容は最後の最後まで分からない。
監督はわざと分からなさを極限まで引っ張っているかのよう。
あまりにばらばらなジグソーパズルの断片の少なさに中盤まで何度か観るのを放棄しかけるが後半に行くにつれてその画面、その演技から眼がはなせなくなる。
世界中の映画人が絶賛するはずだ。
モノクロームの美しさとハンガリー俳優たちの素晴らしい底力には一見も二見も三見もするほどだ。
特に殺されてしまう犯人『倫敦から来た男』の妻のハンガリー女優スィルテシュ・アーギの凄さにはただただ脱帽するしかない。
説明だけの雰囲気芝居が横行しているわが国のタレントたちもたまにはこれぞ演技というものを観たらいい。
また観たくなる麻薬性があるなこの作品は!
『倫敦から来た男』
ある晩、静かな港で起こった殺人事件。
偶然にも大金を手に入れた男と失った男。
二人の人生が交錯し、運命の歯車が狂ってゆく。
伝説的映画『ヴェルクマイスター・ハーモニー』の鬼才タル・ベーラ監督と
20世紀を代表する文豪ジョルジュ・シムノンが放つ孤高のノワール・サスペンス
監督:タル・ベーラ
原作:ジョルジュ・シムノン「倫敦(ロンドン)から来た男」(河出書房新社) 共同監督・編集:フラニツキー・アーグネシュ
出演ミロスラヴ・クロボット、ティルダ・スウィントン
2007年/ハンガリー=ドイツ=フランス/138分/35mm/ヨーロピアンビスタ/ドルビーデジタル
原題:The Man from London 後援:駐日ハンガリー共和国大使館、ハンガリー政府観光局
配給:ビターズ・エンド
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